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腐った妄想の掃き溜め。 slashの気が多分にあるので要注意。

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山田版。
子供と6月を書きかけて変えたもの。

=====

 彼は基本的に子供が好きではない。
 やかましいし、人の話を聞かないし、ちょこまかと動き回ってじっとしていなくてとにかく危なっかしいし、見ていて落ち着かないが目を離すのも落ち着かない。
 だからあまり関わり合いになりたくないと思っている。
 大人でも子供でも人間は面倒だが、子供はなおのこと。
 彼は関わりたくないと思っているが、喚ばれてしまうものは仕方がないのだ。
 何だか最近は約束手形も貰い損ねてチョコやらで誤魔化されている気もするが、断じて好きでやっているわけではない。

 しかし慣れとは恐ろしいもので、何故か今日も彼は山田家の2階でコーヒーを啜っていた。
 目の前のちゃぶ台にはソーサーと食べかけのチョコレートムースが2つ、そして子供が教科書とノート、それに粗末なプリントを広げている。
 「何だ珍しいな。宿題か?」
 「そうだよ。まったく面倒なだけで面白くもないけれどね」
 たまにはやらないと仕方がない、と見目に反して(いや、むしろ相応しく、か?)可愛げもなく呟いた子供の手は迷いなくノートを埋めていく。
 嵩だけはある宿題のようだが、この分ならきっとチョコレートムースを食べ終わる頃には片付いているのだろう。
 「ああまるで拷問だ!こんなくだらない問題、解くまでもない!」
 実際、鉛筆を放り出しかけつつも、残るプリントはあとわずかのようだ。
 「やれやれ、そんなに面倒なら人参でもぶら下げてやろうか」
 「…人参?」
 旨いものを食べれば悪魔だって上機嫌にはなるのだ。
 怪訝そうな子供に、懐から取り出した薄く、古ぼけた…どころか古文書の域に達した冊子を見せてやる。
 「…それは…!」
 「そいつが終わったらくれてやろう」
 「…なかなか良い人参だね。やる気が出たよ」
 二つ名は伊達ではないというべきか、一瞥で人の世にあるはずもないものの正体を見て取ったらしい。
 目を輝かせて、一気にノートを埋め始めた。

 さて、自分も子供が静かなうちに、皿の残りを片付けてしまおうか。

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