腐った妄想の掃き溜め。 slashの気が多分にあるので要注意。
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松下版。
相変わらずよく分かっていない状態で書いた。
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相変わらずよく分かっていない状態で書いた。
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悪魔くんは基本的に奥軽井沢から出ない。
やるべきことは数多く出掛けている暇は惜しい。それに入り用のものは人に命じて持ってこさせるのだから。
だがまったく出掛けないわけではない。それは情報収集のためであったり、彼自ら何かを手に入れるためであったり、父親に呼ばれたためであったりする。
さて今回はといえば。
景気後退治安悪化の叫ばれる都市部の様相を観察にきたのだから、一つ目の理由があてはまるだろうか。
穏やかな昼下がり、彼は二人の大人を伴って百貨店やらの並ぶ駅前の華やいだ辺りを歩いていた。
「景気が悪い景気が悪いと言いはしますが、ここらはそんな気配もありませんね」
「それが問題なんだろう。貧困に喘ぐ者を尻目に我が世の春を謳歌する者もいる。不平等極まりない」
周りに馴染んで思わず暢気なことを言えば、間髪入れずに通りの賑わいを無視した革命家みたいな横やりが入った。
「治安が悪化したといってもやはりこの辺りまでは影響が無いようだね」
などと革命家寄りのことを言うだけあり、悪魔くんの供を務めるのはたいてい蛙男だったが、都市部に出るときは佐藤を連れることも多かった。
佐藤自身などは、やはり人目のあるときはまともな大人が居た方が良いという判断なのだろうと思っているが、実のところは本人にしかわからない。悪魔くんの行動など大体そんなものだ。
「ほら、子供連れも少なくない」
「そうですな。やれやれ騒々しいことだ」
彼の指す先を見れば確かに、ご婦人が息子とおぼしき子供のかんしゃくを宥めていた。
子供はどうやら玩具屋の店先で駄々をこねているらしい。地団駄を踏んで欲しい欲しい買ってくれなくちゃ嫌だと泣きわめいてはご婦人を困らせている。
そういえば自分にもあんなころがあった。
母親の顔を懐かしく思い出して微笑みかけ、ふと物悲しさを覚えた。
この少年にはこんな時期は無かったに違いない。
「…あなたには随分くだらないものに見えるんでしょうね」
「そんなことはないさ」
「え?」
「ああいった経験も大事なことだ。駄々をこねて手に入るものもあるし、そうでないものもある。そうでないものが欲しければ手に入れる方法を考える。考え付かなければ諦める。なべて経験というのは大事なものだよ」
「そう、ですね…」
想像したよりも彼の視点は高いらしい。分かってはいたつもりだが、こうした折りにいかに高みから見下ろされているかを思い知らされる。ときに、彼の見ている世界は自分の見ているそれとは違うのではないかとすら思う。
「さあ、このあたりはもう良いから場所を変えよう。上だけでなく最下層を見ることも必要だからね」
何の迷いもなく薄暗い路地裏に向かう小さな後ろ姿が、底知れず不気味に見えた。
彼の視点は高すぎて計り知れないが、欲しいものに手を伸ばすその様はあの子供と変わらないのではないか。
子供の駄々を可愛いと思えるのは、それが小さく弱いものだからだ。
もしも手に負えないものが一心に駄々をこねたとしたら。
その望みがたとえ善いことだとしても、はたして彼の周囲は無事で済むのだろうか。
「どうした、さっさとしないか」
蛙男の声に促されて後に続きながらも、一度止まってしまった足はなかなかもとのように軽くはならない。
生まれ始めた今までにない迷いを、自分はどこに持っていけば良いのだろう。
やるべきことは数多く出掛けている暇は惜しい。それに入り用のものは人に命じて持ってこさせるのだから。
だがまったく出掛けないわけではない。それは情報収集のためであったり、彼自ら何かを手に入れるためであったり、父親に呼ばれたためであったりする。
さて今回はといえば。
景気後退治安悪化の叫ばれる都市部の様相を観察にきたのだから、一つ目の理由があてはまるだろうか。
穏やかな昼下がり、彼は二人の大人を伴って百貨店やらの並ぶ駅前の華やいだ辺りを歩いていた。
「景気が悪い景気が悪いと言いはしますが、ここらはそんな気配もありませんね」
「それが問題なんだろう。貧困に喘ぐ者を尻目に我が世の春を謳歌する者もいる。不平等極まりない」
周りに馴染んで思わず暢気なことを言えば、間髪入れずに通りの賑わいを無視した革命家みたいな横やりが入った。
「治安が悪化したといってもやはりこの辺りまでは影響が無いようだね」
などと革命家寄りのことを言うだけあり、悪魔くんの供を務めるのはたいてい蛙男だったが、都市部に出るときは佐藤を連れることも多かった。
佐藤自身などは、やはり人目のあるときはまともな大人が居た方が良いという判断なのだろうと思っているが、実のところは本人にしかわからない。悪魔くんの行動など大体そんなものだ。
「ほら、子供連れも少なくない」
「そうですな。やれやれ騒々しいことだ」
彼の指す先を見れば確かに、ご婦人が息子とおぼしき子供のかんしゃくを宥めていた。
子供はどうやら玩具屋の店先で駄々をこねているらしい。地団駄を踏んで欲しい欲しい買ってくれなくちゃ嫌だと泣きわめいてはご婦人を困らせている。
そういえば自分にもあんなころがあった。
母親の顔を懐かしく思い出して微笑みかけ、ふと物悲しさを覚えた。
この少年にはこんな時期は無かったに違いない。
「…あなたには随分くだらないものに見えるんでしょうね」
「そんなことはないさ」
「え?」
「ああいった経験も大事なことだ。駄々をこねて手に入るものもあるし、そうでないものもある。そうでないものが欲しければ手に入れる方法を考える。考え付かなければ諦める。なべて経験というのは大事なものだよ」
「そう、ですね…」
想像したよりも彼の視点は高いらしい。分かってはいたつもりだが、こうした折りにいかに高みから見下ろされているかを思い知らされる。ときに、彼の見ている世界は自分の見ているそれとは違うのではないかとすら思う。
「さあ、このあたりはもう良いから場所を変えよう。上だけでなく最下層を見ることも必要だからね」
何の迷いもなく薄暗い路地裏に向かう小さな後ろ姿が、底知れず不気味に見えた。
彼の視点は高すぎて計り知れないが、欲しいものに手を伸ばすその様はあの子供と変わらないのではないか。
子供の駄々を可愛いと思えるのは、それが小さく弱いものだからだ。
もしも手に負えないものが一心に駄々をこねたとしたら。
その望みがたとえ善いことだとしても、はたして彼の周囲は無事で済むのだろうか。
「どうした、さっさとしないか」
蛙男の声に促されて後に続きながらも、一度止まってしまった足はなかなかもとのように軽くはならない。
生まれ始めた今までにない迷いを、自分はどこに持っていけば良いのだろう。
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