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腐った妄想の掃き溜め。 slashの気が多分にあるので要注意。

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麦鰐だと主張する。
…すみませんごめんなさい。

=====

 とろとろと、黄金色が銀色から垂れ落ちて、深い深い黒に溶けていく。
 銀色から零れて糸を引く黄金色。
 ローテーブルの上に行儀悪く顎を乗せて、それを一心に見つめているのは麦藁帽子の少年だ。

 何のことはない、濃い目のコーヒーにスプーン一杯の蜂蜜を垂らしただけのことなのだが。
 この量では甘味というほどの甘味もつかないし、色も当然。ほんの香り付け程度だ。
 だからこそ質の良いものを用意する。
 小瓶の中には普通に売られているものよりも少し色の濃い蜂蜜が入っている。とある花の単花蜜なのだが源となる花自体が少なく、値は通常のものとは桁が異なるらしい。彼自身は値段などろくに気にもしていなかったが。

 室温はさほど高くない。そのせいでゆっくりゆっくりと落ちていく蜂蜜を飽きもせずにじっと見ている。
「…面白ェか?」
「んー。砂糖入れれば良いんじゃねぇのか?」
 あまりに凝視するものだから聞いてみれば、質問を質問で返された。
 …この子供は。
「甘味じゃねェ、香り付けだからな」
「ふーん」
 興味のなさそうな返事の割に、相変わらず目線はスプーンに釘付けのままだ。
 まったく、子供のすることはよく分からない。
 ふと思いついて、、蜜を落としきる前のスプーンを口に突っ込んでやった。
 むう、だか、ぐう、だか聞こえた気がするが気にしないことにする。
「…うまい」
「だったら良く味わえ」
「ん」
 カップを口に運べば、普段よりも香りが薄い。
 混ぜられなかったせいで、垂らした蜜が底に溜まってしまったようだ。飲み干せば最後はうんざりするほど甘いに違いない。

 だがまあ、それも良いだろう。

 満足そうにスプーンを舐める子供を眺めてそう思ってしまう。
 カップを運ぶ口元はほんの少し、笑みに形を変えていた。

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