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腐った妄想の掃き溜め。 slashの気が多分にあるので要注意。

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麦鰐だと主張する。
乗組員と合流するまで仲良くしていたら良いのに。
…すみませんごめんなさい。

=====

 落ち着きがない。
 目に付いたものに考えなしに近づく。しかも全力で。まるで年端もいかない子供同然に。
 それでも小さな子供なら速さも行動範囲もたかが知れている。
 それがもし、自分に匹敵…いや、匹敵は…ともかく、かなりの行動能力を持つ相手だとしたら。
 普通は諦めて放置するだろう。
 自分も放置したい。可能ならば全力で、放置したい。
 だが前回それをやったら、気付いたときにはその島中の海軍総力で追われる羽目になった。
 理由は後から一応問い質してはみたが要領を得なかった…というか何となく想像はついたのだが信じたくなかったのでそう思うことにした。
 少なくとも自分には、海軍の面子にかけて指名手配中の人間が、にぎわう街中で白昼堂々の食い逃げを試みるに至る経緯が理解できない。

 ともかく。
 無関係の振りが出来れば良かったが、それもままならない以上、断じて放置は出来ない。
 となればこれが最良の手段だ。そのはずだ。

 「良いか、外すなよ。この前みてェな面倒はごめんだからな」
 麦藁帽子の馬鹿に向かって、その腰に巻いた荒縄の端を持って宣言する。
 「えー。いやだ」
 「いやだじゃねェ」
 こめかみに青筋をひとつ。
 「でもいやだ」
 「…てめェは…」
 元々気の長いほうではない自覚はある。丈夫とは言い難い堪忍袋の緒は即座に切れた。
 「好き勝手してェならてめェの乗組員連中と合流してからにしやがれ!この間自分が何やったか分かってやがんのか!ロクに反省もしてねェ人間ホイホイ放せるか!!」
 「…しょうがねぇなぁ」
 ようやく分かったかと思えば、あっさり腰の縄を外して町へ向かおうとする。
 「おい、いい加減に…」
 「だから、こうすりゃ良いんだろ」
 体温の高い手が、指輪だらけの右手を掴んだ。
 「…なにしてやがる」
 「だから、離れなきゃ良いんだろ?」
 お前この手でどういう目に会ったか覚えていないのか、とか、何が悲しくてこいつとお手々繋いで歩かなきゃならない、とか、そもそもお前全く反省していないだろう、とか。
 色々と言いたい事はまだまだあったはずなのだが押し問答も大概面倒くさいし何よりこれに反省させるのは骨が折れる気がする。
 そうだ、自分は気が短いのだ。


 「……まあ良い」


 自分より幾分小さい手を振り払わなかった理由はそれだけだ。
 理由など他に、あるものか。

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