腐った妄想の掃き溜め。 slashの気が多分にあるので要注意。
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阿雲?
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今日は何だか調子が悪かった。
ひっかけた女はイマイチで、途中で飽きて放ってきた。
腹が減って入ったラーメン屋はマズかった。
マズいが食えない程じゃないというのが余計に性質が悪い。気乗りしないまま、それでもなんとなく麺を啜ってしまう。
しかも座った席が悪かったらしく、西日が強烈に差し込んでくる。
目を細めながら、どうにか味をごまかそうと胡椒に手を伸ばした途端。
何故か突然、昔の光景が脳裏に蘇った。
確か中二の終わり頃。
金曜の放課後、いつものように部活をサボって、いつものように女を拾いに街へ出た。
それが最初のきっかけだった。
そのとき拾った女もそのときの街の様子も覚えちゃいないが、グラウンドから俺を見送る雲水の様子がおかしかったのだけは覚えている。普段なら胸倉掴むような勢いで怒鳴るクセに、そのときは何も言わずにただ目を逸らしただけだった。
何だって今更あんなことを思い出したんだ?
時期は確か今より2、3ヶ月前だったし、出てった時間も夕暮れ時なんかじゃなかった。
別にマズいラーメンも食ってないし。
「…あぁ」
ひょっとして。
携帯の画面で日付を確認すると、予想通り木曜日だった。
金曜の夕方に寮を出て、5日とちょっと。
着歴も受信ボックスも見るまでもなく、雲水からの連絡はない。
3年前のあのときも、今と同じように、金曜から5日間。
同じように、連絡は何もなかった。
些細といえば些細なこと。
それがきっかけだった。
あの頃から無断外泊なんて数えるのも馬鹿々々しくなる位しょっちゅうで、雲水の妙な様子のことも次の日には忘れていた。
そのまま1日、1日と過ぎていって、5日目経った木曜日。
確かに無断外泊はしょっちゅうだった。
親だの何だのは見て見ぬ振りをしていて、注意どころか行き先を聞かれることもなかった。
当然、自分も連絡なんてする気はなかった。
悪友や女の所を渡り歩けば、寝るところにも食うものにも困らなかったから。
だけど、それまでは必ずあったんだ。
上手く繋がることはあんまりなくて、着歴だったり、タイトルもなにもない1行メールだったりはしたけど。
大抵は3日目あたりに。遅くとも5日目までには、雲水からの連絡が。
あのときは、それがなかった。
それを確認した後、俺は携帯を踏み潰して、1ヶ月間家に戻らなかった。
―――心配かけて。
―――親や学校を何だと思って。
―――どれだけ迷惑をかけたと。
帰ってからの反応は概ね予想通りだった。
居間に呼ばれて、親と教師がしかつめらしい顔で説教するのを聞き流す。
この教師は担任だったかそれとも学年主任とかそーいうもんだったか? そもそも心配したのはテメエらの勝手。大体普段テメエらがどれだけ親だの教師だのの責任を果たしてるって? 俺がフラフラしてる間、テメエらは心配してるフリして羽伸ばしてたんだからお互い様ってやつじゃねぇか。
そんなことを考えてたら顔に出たのかなんなのか、途端に黙りこくって拳を震わせる。
相手が俺じゃなけりゃ手の一つも上げたいんだろうが、コイツらにそんな度胸があるわけもない。
俯いた母親が顔を覆って泣き喚き始めた。
まったく、コイツらときたらウザいとしか言い様がない。
反省する気のない俺にようやく気付いたのか、それとも諦めたのか。
最後の台詞は良く考えなさい、とかなんとか、そのまま同じ台詞を返してやりたくなるようなことだった気がする。
部屋に向かう途中で、廊下に影を見つけた。
親だの教師だのは、どうでも良かったんだ。
問題は、あの影だけ。
何で今回に限って。
何で出て行く自分に何も言わなかったのか。
何で連絡しなかったのか。
だけど俺が何か言うよりも早く、握りつぶされるんじゃないかと思うくらいの強さで、二の腕を掴まれた。
俯いた坊主頭の項が、少し震えている。
絞り出された声は、それよりもっと震えていた。
「…悪かった」
そこでようやく、数年ぶりか、ひょっとしたら生まれて初めて。
自分は『悪いこと』をしたんだ、と本気で思ったのだ。
のれんをくぐって、軽く伸びをした。
背後からはゴマ油とニンニクの匂い。ムードもロマンもヘッタクレもあったもんじゃないが。
たまには門限前に帰ってやるのも悪くない、かもしれない。
ひっかけた女はイマイチで、途中で飽きて放ってきた。
腹が減って入ったラーメン屋はマズかった。
マズいが食えない程じゃないというのが余計に性質が悪い。気乗りしないまま、それでもなんとなく麺を啜ってしまう。
しかも座った席が悪かったらしく、西日が強烈に差し込んでくる。
目を細めながら、どうにか味をごまかそうと胡椒に手を伸ばした途端。
何故か突然、昔の光景が脳裏に蘇った。
確か中二の終わり頃。
金曜の放課後、いつものように部活をサボって、いつものように女を拾いに街へ出た。
それが最初のきっかけだった。
そのとき拾った女もそのときの街の様子も覚えちゃいないが、グラウンドから俺を見送る雲水の様子がおかしかったのだけは覚えている。普段なら胸倉掴むような勢いで怒鳴るクセに、そのときは何も言わずにただ目を逸らしただけだった。
何だって今更あんなことを思い出したんだ?
時期は確か今より2、3ヶ月前だったし、出てった時間も夕暮れ時なんかじゃなかった。
別にマズいラーメンも食ってないし。
「…あぁ」
ひょっとして。
携帯の画面で日付を確認すると、予想通り木曜日だった。
金曜の夕方に寮を出て、5日とちょっと。
着歴も受信ボックスも見るまでもなく、雲水からの連絡はない。
3年前のあのときも、今と同じように、金曜から5日間。
同じように、連絡は何もなかった。
些細といえば些細なこと。
それがきっかけだった。
あの頃から無断外泊なんて数えるのも馬鹿々々しくなる位しょっちゅうで、雲水の妙な様子のことも次の日には忘れていた。
そのまま1日、1日と過ぎていって、5日目経った木曜日。
確かに無断外泊はしょっちゅうだった。
親だの何だのは見て見ぬ振りをしていて、注意どころか行き先を聞かれることもなかった。
当然、自分も連絡なんてする気はなかった。
悪友や女の所を渡り歩けば、寝るところにも食うものにも困らなかったから。
だけど、それまでは必ずあったんだ。
上手く繋がることはあんまりなくて、着歴だったり、タイトルもなにもない1行メールだったりはしたけど。
大抵は3日目あたりに。遅くとも5日目までには、雲水からの連絡が。
あのときは、それがなかった。
それを確認した後、俺は携帯を踏み潰して、1ヶ月間家に戻らなかった。
―――心配かけて。
―――親や学校を何だと思って。
―――どれだけ迷惑をかけたと。
帰ってからの反応は概ね予想通りだった。
居間に呼ばれて、親と教師がしかつめらしい顔で説教するのを聞き流す。
この教師は担任だったかそれとも学年主任とかそーいうもんだったか? そもそも心配したのはテメエらの勝手。大体普段テメエらがどれだけ親だの教師だのの責任を果たしてるって? 俺がフラフラしてる間、テメエらは心配してるフリして羽伸ばしてたんだからお互い様ってやつじゃねぇか。
そんなことを考えてたら顔に出たのかなんなのか、途端に黙りこくって拳を震わせる。
相手が俺じゃなけりゃ手の一つも上げたいんだろうが、コイツらにそんな度胸があるわけもない。
俯いた母親が顔を覆って泣き喚き始めた。
まったく、コイツらときたらウザいとしか言い様がない。
反省する気のない俺にようやく気付いたのか、それとも諦めたのか。
最後の台詞は良く考えなさい、とかなんとか、そのまま同じ台詞を返してやりたくなるようなことだった気がする。
部屋に向かう途中で、廊下に影を見つけた。
親だの教師だのは、どうでも良かったんだ。
問題は、あの影だけ。
何で今回に限って。
何で出て行く自分に何も言わなかったのか。
何で連絡しなかったのか。
だけど俺が何か言うよりも早く、握りつぶされるんじゃないかと思うくらいの強さで、二の腕を掴まれた。
俯いた坊主頭の項が、少し震えている。
絞り出された声は、それよりもっと震えていた。
「…悪かった」
そこでようやく、数年ぶりか、ひょっとしたら生まれて初めて。
自分は『悪いこと』をしたんだ、と本気で思ったのだ。
のれんをくぐって、軽く伸びをした。
背後からはゴマ油とニンニクの匂い。ムードもロマンもヘッタクレもあったもんじゃないが。
たまには門限前に帰ってやるのも悪くない、かもしれない。
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